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help リーダーに追加 RSS 「割りばし死亡事故」判決に思うこと その1:時の流れ、時勢の変化

<<   作成日時 : 2008/02/13 09:15   >>

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 もう9年前の事件である、「割りばし死亡事故」。二年前の刑事訴訟(第一審)では無罪だった。昨日の判決は民事訴訟(第一審)の判決。死んだ子どもの家族が病院&医師に対して約9000万円の損害賠償を求めた裁判で、裁判官は賠償請求を棄却した。

 第一審の判決が事故から9年後と言うのはちょっと長いとも思うが、それはそれとして。しかし、刑事事件では医師の過失を認めたのに対して、民事裁判では医師の過失そのものを認めなかったあたりは、個別の裁判官による判断のばらつき、というよりは、この2年間での状況の変化(「医療崩壊」問題、「医療事故」に対する認識の問題、人間のミスに対する認識に関する変化など)が作用したのかもしれない。はっきり言うと、事故直後あるいは2,3年後(つまり今から数年前)であれば、原告の言い値がそのまま判決文になっていた可能性は高かったのではないか?

 一昔であれば、この裁判、「息子を殺された気の毒な家族」vs「傲慢な大病院」という図式でマスコミが煽っていたかもしれない(今もそういう図式を描くメディアもあるかもしれないが)。そして、そのような世間の「空気」に影響されて裁判官も「悪徳病院を罰してくれるわ」式の判決文を書いたかも。

 しかし、とりわけ昨年から、医療に関する出来事、そしてそれを医療関係者に責任を多く負わせるべきかどうか悩ましい出来事が表に出てきた、と思う。それを通じて「医師でもできることとできないことがある」という「空気」が少し出てきたのではないだろうか。

 下に貼り付けた読売の記事のなかから
両親側は「割りばしによる頭蓋内損傷を考えて画像診断や問診を行うべきだった」と主張したが、判決は「割りばしが頭蓋内に突き刺さった例は過去に報告されておらず、当時の医療水準では頭蓋内損傷の可能性があると診断することはできなかった」と指摘。さらに、「仮に診断できていても救命の可能性が高かったとはいえない」と述べた。
の部分に注意したい。「割りばしが頭蓋内に突き刺さった例は過去に報告されておらず、当時の医療水準では頭蓋内損傷の可能性があると診断することはできなかった」と裁判官が見なしたのは、この裁判の控訴審だけでなく、その他の医療裁判にも影響を与えるかもしれない。つまり「当時の医療水準での治療をしている限りにおいて、その医師を罰することは適当ではない」という流れの始まりになるかもしれない。その流れが定着するかどうかはその後の裁判及び裁判官の判決次第なわけだが。

 もし、上に書いた「流れ」が定着するとすると、死んだ息子さんの両親が裁判で勝つには、その担当医師のやったことが「その当時の医療水準に照らしても不適切なものであった」ことを示す必要があるだろう。まあ、この裁判は、刑事・民事のいずれも一審が終わった段階。あと2×2=4回の裁判が行われる可能性が高い。両親にとっても、病院側(特に担当医師)にとっても長い道のりだ。

P.S ほんとはこういうことは書きたくないのだが、今回の損害賠償請求訴訟で、判決が「刑事裁判よりもさらに」厳しかったのは「立ち食い・歩き食いが良くないことであり危険なことであることをしつけなかったこと、その行動を放置したことに対する両親のミス」も考慮に入れたからかもしれない。「死に至らしめた責任」という点を考えると、こちらの方がより責任が明らかでなおかつ責任が重そうだし。アメリカだったら、両親の管理責任が問われていたかも。幸か不幸か日本ではそのようなことで裁判にはなかなかならないし、各メディアも両親のミスについては書かないけどね。

(こちらの記事もどうぞ)
「割りばし死亡事故」判決に思うこと その2:頑張る産経新聞
「割りばし死亡事故」判決に思うこと その3:裁判員になったらどうしよう?

(今回の一冊)
「割り箸が脳に刺さったわが子」と「大病院の態度」 (小学館文庫)
「割りばし事故死」訴訟、両親の賠償請求を棄却…東京地裁(読売)
1999年に東京都杉並区の保育園児杉野隼三ちゃん(当時4歳)が綿あめの割りばしをのどに突き刺して死亡した事故で、杏林大医学部付属病院(三鷹市)が適切な診療を怠ったのが死亡の原因として、両親が、同病院を運営する学校法人と治療した当時の当直医、根本英樹医師(39)に約8960万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、東京地裁であった。

 加藤謙一裁判長は「医師や病院に過失はなく、診療行為と死亡との間に因果関係もない」と述べ、両親の請求を棄却した。両親は控訴する方針。

 事故を巡っては、根本医師が業務上過失致死罪に問われ、東京地裁は2006年3月、「診断ミスはあったが、死亡との因果関係はなかった」として無罪判決(検察側控訴)を言い渡したが、この日の判決は診断ミス自体を認めなかった。

 判決によると、隼三ちゃんは99年7月、自宅近くの盆踊り大会に母親と参加した際、綿あめの割りばしをくわえたまま転倒。同病院に運ばれたが、根本医師は薬をのどに塗るなどして帰宅させた。隼三ちゃんは翌朝、死亡。その後の解剖で頭蓋(ずがい)内に約7・6センチの割りばし片が刺さっているのがわかった。

 両親側は「割りばしによる頭蓋内損傷を考えて画像診断や問診を行うべきだった」と主張したが、判決は「割りばしが頭蓋内に突き刺さった例は過去に報告されておらず、当時の医療水準では頭蓋内損傷の可能性があると診断することはできなかった」と指摘。さらに、「仮に診断できていても救命の可能性が高かったとはいえない」と述べた。

 東原英二・同病院長の話「主張が認められほっとしています。杉野隼三さんに対しては改めて心からご冥福(めいふく)をお祈りします」
「割り箸が脳に刺さったわが子」と「大病院の態度」 (小学館文庫)

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タイトル (本文) ブログ名/日時
あれから9年
割り箸事件が起こったのは99年だという。判決以上に、もう9年の歳月が流れていたことに驚いた。 ...続きを見る
かきなぐりプレス
2008/02/13 15:03
ちょっと尋ねてみたい・・・これって、親の過失なのではないか??
時事ネタは、あまりテーマにしないのですが、たまたま今朝、CX系の報道バラエティ( ...続きを見る
神戸っ子の“目指せ!道楽の達人”
2008/02/14 02:17
わりばし死亡事故裁判 遺族側敗訴です。
この出来事(事故以外の何物でもない,事件ではないでしょう)の 本質としては,亡くなったお子さんの死因はわりばしが 突き刺さるような食べ方をして転んだことであって 医者が殺したわけではないということ。しかし,不思議な気がしますね…。 ほんのここ2,3年くらいまでは, この手の事件,この事故の件自体でも,遺族かわいそうという意見が 主流だったと思うのですが…。 ...続きを見る
D.D.のたわごと
2008/02/14 06:46
割りばし事故訴訟 医療過誤と決め付ける報道に?
まず初めに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。 さて。 この判決。無罪ですよね。 じゃぁ、医療過誤ではないとされたわけです。 何故?医療過誤と決め付けて報道するのでしょう、報道の平等性に著しく欠けます。 報道は真実と事実を報道すべきで、医療過誤とするならば、検証記事にそう書くべきで、見出しに書くものではないと思います。 > 女医^^遊佐奈子のお気楽! < ←メインのブログにも是非お越しくださいませ^^。 要するに、冤罪被害者が無罪を勝ち取ったのに、「犯罪を犯した人間に無実判決大いに疑問」... ...続きを見る
女医^^遊佐奈子の政治と医療・裁判員制度...
2008/02/19 12:14

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして、泌尿器科勤務医です。
>事故直後あるいは今から数年前であれば、
>原告の言い値がそのまま判決文になっていた
>可能性は高かったのではないか?
これは私も感じました。
逆に言うと、今回の判決のような
遺族側の完全敗訴の判決を出さざるを得ないほど
『医療崩壊』が深刻化しているということですね。

>各メディアも両親のミスについては書かないけどね。
そうなんですよね。
マスコミはあくまでも、
病院・医者=悪者、患者・遺族=弱者
の立場を崩しません。
先日の「奈良妊婦死産事件」でもそうでしたね…
うろうろドクター
2008/02/14 10:21
>「当時の医療水準での治療をしている限りにおいて、その医師を罰することは適当ではない」という流れの始まり

ええとですね。
医療水準というのは、その場所・施設・時期などで判断されるべきと言うのは、ずーーーと前からの「常識」で、最近の風潮の方が異常だったのです。
たんに回帰しただけでしょう。
ssd666
2008/02/14 12:20
この記事を読むまで、保護者の責任という発想はありませんでした。おかげで考え方が随分変わりました。
るりれん
2008/02/14 19:10
うろうろドクターさんへ
はじめまして。専門家の人からコメントしていただいて嬉しいです。これからも色々教えてください。

ssd666さんへ
はじめまして。要するに、ここ10年くらいが非常識だった、ということなんですかね。その原因は、患者側の意識の変化&医療に対する知識のなさ&マスコミのあおり、からなんでしょうか?

るりれんさんへ
はじめまして。コメントしていただいてありがとうございました。私は医療関係者ではないので、とんでもないことを書いているかもしれませんが、楽しく読んでいただければ幸いです。
3番目の落書き
2008/02/14 20:41
TBサンクスです
「病院側からの資料」はカルテや勤務日誌?みたいなものと考えますが、それを提出しないのならば病院側が疑われても致し方ないですよね。

刑事、民事と訴えをおこしている時点で両親に親の責任という概念はないのでしょう。
7.6cmも割り箸が刺さっていたのなら、折れて残った割り箸は相当短かったはずですが、それに気付かない両親も、、、
オオモリ野郎
2008/02/15 17:30
オオモリ野郎さんへ
コメントありがとうございました。医療ミスがあったのかどうかは別として、情報公開は大事かもしれませんね。患者側に理解できるかどうかはともかくとして。
3番目の落書き
2008/02/19 00:30

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